二ポポが出迎えてくれる商店街

オホーツク海に面した北海道網走市は、海と大地の織りなす美しい景観のある街。漁業と農業が盛んで、豊かな自然からの恵みである食材を生かした料理が味わえる、食の宝庫でもあります。全長約800メートルの通り沿いに鮮魚店や精肉店、靴店、眼鏡店、書店などが立ち並ぶ網走中央商店街は、網走市の日常生活を支え続けてきた商店街です。

そんな商店街にある憩いの場の西三プラザでは、大きな二ポポ像が出迎えてくれます。アイヌ語で「木の小さな子供」を意味する二ポポは、網走の伝統的な木彫りの民芸品。「幸運のお守り」として、今も大切にされています。

老舗の精肉店、肉のまるゆう

そんな二ポポ像から歩いて数分の場所にある「肉のまるゆう」は、1949（昭和24）年創業の老舗の精肉店。どこか懐かしさを感じさせるアットホームな商店街のお肉屋さんとして、地元の人々に愛され続けてきました。

まるゆうのこだわりは「どのお肉も仕入れたものはそのまま出さず、お客様が美味しく安全に食べられるように処理をした状態で販売すること」。ひき肉なども余分な部位を取り除き、整形しています。ショーケースにはまるゆうのみが扱う、柔らかくて甘みが人気の網走ポークや網走和牛、鶏肉などが並びます。少量のお肉から量り売りで買うことや、調理法に合ったお肉の相談などもでき昔ながらの親しみやすいスタイルで営業を続けています。

食べやすく柔らかなラムの網走ジンギスカン

地元の食卓に新鮮な精肉を届けてきた「肉のまるゆう」。その豊富なお肉のラインアップの中でも「あれこそが、我がまちのジンギスカンの味」という人が多いのが「網走ジンギスカン」です。

「網走ジンギスカン」に用いられるのは、生後1年未満の仔羊の肉であるラム。三代目店主の清水秀男（しみず・ひでお）さんは「当店ではジンギスカンが初めての方でも食べやすいように、ラムを秘伝のタレに漬け込んでいます。ニュージーランド産やオーストラリア産の上質のラムは、羊特有のクセが少なく、肉質も柔らかなんです」と、「網走ジンギスカン」へのこだわりを話してくれました。

味を守り続けて60余年、秘伝のタレ

清水さんが「初代の店主が試行錯誤しながら10年かけて作り上げた味を、今も大切に守り続けています」と語る秘伝のタレはリンゴやみかん、玉ねぎ、唐辛子など多くの素材が絶妙にブレンドされています。ピリリとした辛さの中に、さわやかな柑橘系の香りと果実のほのかな甘みを感じられる、他のジンギスカンにはない独自の味わい。一口食べれば、60年以上に渡って「肉のまるゆう」がこの味を守り続けてきた理由が分かります。

ラムの肉のうまさが濃厚なのに、あと味がすっきりとした「網走ジンギスカン」はご家庭での夕食にはもちろんのこと、野外での炭火のバーベキューなどにもぴったりの逸品。ごはんやビールが進むことまちがいなしです。

お肉のプロが教える、ジンギスカンの味わい方

取材の際、清水さんにジンギスカンのおいしい作り方、食べ方を教えていただきました。

１.「網走ジンギスカン」はラムを秘伝のタレに漬け込み、冷凍でお届けします。解凍の際は冷凍庫から冷蔵庫に移して、ゆっくりと自然解凍させてください。

２.できれば、中央が兜のように盛り上がり、溝が刻まれた鋳鉄製のジンギスカン鍋をご用意ください。北海道以外では入手が難しいかもしれませんが、最近はインターネット通販でも購入が可能です。もちろん、フライパンやホットプレートで調理されても、おいしく召し上がっていただけます。

3.「網走ジンギスカン」に添える野菜はもやしが定番中の定番。その他にもかぼちゃやピーマン、玉ねぎ、ジャガイモなどお好みの野菜と一緒にジンギスカンをお楽しみください。

4.ジンギスカンの〆には、うどんがおすすめ。鍋に残った秘伝のタレをうどんにしっかりとからめてからお召し上がりください。これは北海道では定番の食べ方で、肉や野菜のうまみもたっぷり染み込んだ絶品の焼うどんは、たまらないおいしさですよ。